求められる「食の安全」
「フードディフェンス(食品防御)」という用語がはじめて登場したのは2010年で、ISO22000とPAS220を満たす規格で、2000年に発足したGFSI(世界職員安全イニシアティブ)が推奨しています。
フードディフェンスとは、食品への意図的な異物の混入を防止する取組みのことです。
原料調達から販売までのすべての段階において、人為的に毒物などが混入されることのないように監視するもので「食品防御」とも訳されます。
2013年の末に日本中を騒がせた「アクリフーズ」の農薬混入事件をご存じの方も多いかと思います。
中国の冷凍ギョーザで中毒が起きた事件(2008年)以降、食品に関わる企業では、食品の安全を守る「フードディフェンス(食品防御)」への意識が高まりました。
しかしながら、日本のフードディフェンスの歴史はまだ浅く、このような農薬混入事件が起きてしまいました。
事件はいったい何故起きて、どうしたら防げたのでしょうか。
事件の概要
アクリフーズの農薬混入事件は、会社の待遇に不満を持った契約社員による犯行でした。
犯人は自分の持ち場以外にも自由に出入することができ、所在確認などの管理もなされていませんでした。
「悪意を持った人間は外からやってくる」という認識によって、侵入防止等の防犯は行っていたようですが、内部犯行の対策は不十分であったと、アクリフーズ側が認めています。
事件を招いた原因
●性善説に基づいた考え方 ⇒組織内には悪意を持った人間がいないと言う「性善説」に基づき、従業員の管理・監視を怠った。
●従業員に不満を持たせた ⇒給与体系の変更によって、内部に不満を持った従業員を発生させてしまった。
●事件対応の遅れ ⇒異臭の苦情を受けてから自主回収まで、1ヶ月半もの期間を要してしまった。
内部犯も考慮した「フードディフェンス」が必要
ではどうしたら事件は防げたのでしょうか。
まずは従業員に犯行の動機を作らない、労働環境の改善でしょう。
しかしそれでも内部の犯行を完全に防ぐことは不可能であるということを認識することが重要です。
そこで・・・
悪意を持った人間が内部に存在することを前提にした、「性悪説」の視点からの対応が必要になってきます。
◎具体的には、関係者の行動制限・監視・記録を行うことです。
・従業員ごとに権限を設定し、関係部署以外への立ち入りを制限
・各部署に入場する際にICカードによる記録
・監視カメラによる撮影等で所在を明確化
ここまで行うことで、いつ誰がどこにいるかの把握が可能となり、事件が起こった際に迅速な対応が可能となります。
この対策を行った上で、関係者に管理をされている事実を伝え、もし事件を起こした場合、直ちに犯人が特定され、逮捕や懲戒免職等の不利益を被るなど従業員教育をします。
こうした心理的抑制をもって、事件の発生自体を防いでいくことが必要となります。
できるところから対策を
完璧なフードディフェンスには、入退出管理・監視・記録といった大掛かりなシステムが必要となってきます。
当然かかる費用も莫大となり、すぐには難しいかもしれません。
しかし、事件が起こってしまうと会社の社会的信頼の失墜や株価の下落などを被る損害が多大となってしまいます。
まずは今すぐできる対策から始めてみてはいかがでしょうか。